ファンタジー基本図書?


「斎藤隆介童話集」

切り絵の挿絵とともに、心にくっきりと刻み込まれている、古く懐かしい日本を舞台にした物語たち。今も教科書に載っているのでしょうか?
ここでご紹介しているのは文庫版ですが、初めての方は図書館でハードカバーの全集や絵本をどうぞ。やっぱり、あの絵があってこそだと思います。

「斎藤隆介童話集」
斎藤隆介著 ハルキ文庫 2006

峠の小屋におじいさんと暮らす豆太はとってもこわがりの臆病者。5歳にもなってまだ夜に1人で雪隠に行けず、いつもいつも小さな声でおじいさんを起こしてしまう。家の外には豆太が「モチモチの木」と呼ぶ大きな木があって、それが夜には両手をわあっと広げて豆太を脅かすのだ。けれど、霜月二十日の晩、おじいさんが夜中に突然苦しみだして……(「モチモチの木」)。

子供の頃に絵本や教科書で読んだこのお話、覚えていますか?
「モチモチの木」、「八郎」、「ベロ出しチョンマ」、「ひさの星」、そして、「花咲き山」。どれか1冊くらいは、どなたでも読んだことがあるのではないでしょうか? 昔々の農民の生活を描いた、民話風の童話たち。切り絵の挿絵と共に、私の中にもくっきりと残っていました。長編も含め、小学校の頃に全集でも読みましたが、今回のこの本は、短編25編を収録した、コンパクトな本です。挿絵も、絵本のそれとは全然趣の違うものです。でも、とっても懐かしかったので買ってきました。

子供の頃の私が一番好きだったのは「花咲き山」でした。確か、小学校時代の親友が貸してくれたんだったと思います。花の絵の雰囲気がなんとも素敵で、ずっとずっと印象に残っていましたねー。文章も、今回読み直してみたらやっぱり印象的でした。

この花咲き山一めんの花は、みんなこうして咲いたんだ。つらいのをしんぼうして、自分がやりたいことをやらないで、涙をいっぱいためてしんぼうすると、そのやさしさと、けなげさが、こうして花になって、咲き出すのだ。

このお話のこの部分も含めて、この人の一連の作品には、無私の心で自己犠牲する人々が多く描かれています。教訓的すぎて嫌だと言う人も現代には多いのだろうなと、読んでいて思いました。そして、私自身について言えば、ああ、こういう本を子供の頃にたくさん読んできたから、今も自己犠牲系の主人公達にひかれるんだなと(苦)。

誰かのために、何かのために、自分自身を殺しても自らのつとめを果たそうとする人々。そして、彼らに救われて、ずっとそのことを語り伝える村の人々。懐かしい日本の原風景とともに、色々なことに一所懸命だった子供の自分と、いつか誰かのために何かをしてみたいと思っていた日々を思い出しました。

ちなみに、大人になった今回、この25編の中で一番好きだったのは、「緑の馬」か「半日村」でした。それと「天狗笑い」が心に残りましたねー。今の子供達にも、ぜひ読んでもらいたいなあって思いました。
2006.11.16



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