ファンタジー・海外

Donna Jo Napoli
ドナ・ジョー・ナポリ

日本では、ファンタジー作家扱いみたいですので、一応こちらにおいておきます。私が読んだのは1冊だけ。しかも、ファンタジーではなくて時代物なんですが。

"Daughter of Venice"  2002

1592年のヴェニス。貴族の娘である14歳のドナータは、家族と一緒に運河沿いの屋敷に暮らしていた。父親は貴族の当主、母親は裕福な毛織物業者の娘。それゆえに、母親は子ども達を、生粋の貴族の子弟よりも更に貴族らしく育てた。
ヴェニスの貴族の姫は、自らの足で通りを歩くことはない。どこかに出かけるときも、自分の屋敷の前からゴンドラに乗り、訪問先でゴンドラを下りるだけ。お祭りを見るときも、ただゴンドラに乗り、運河の上の特等席から眺めるだけ。もちろん、外に出るときには顔にベールをかぶり、踵の高い、歩きにくい靴を履く。一般の人々に混ざって歩くことはないし、普通のお店に入ったこともない。ドナータはある日、訪問先の貴族の屋敷でヴェニスの鳥瞰図を見つけ、そこに描かれたヴェニスの街を、通りを、自分が全く知らないことに深い悲しみを覚えた。愛する街ヴェニス。けれど、彼女が自分の目で見たことのある場所はほとんどないのだ。
そしてある日、彼女は、男の子に変装して街に出ることを企てるのだが……。

児童書です。何歳向けとも書かれてないですが、ヒロインは14歳なので、その辺かと。もっとも、当時のイタリアの14歳は、結婚もできる年齢なんですが。

夏の旅行の時に、書店で呼ばれた本の1つです。今回読んだのは「イタリアつながり」かな? 読んでみたら、「ユダヤ人つながり」でもありました。やはり、引きがあるときにはあるものですねー。

ええとー、女の子向けの、どきどきするような日常の冒険のお話です。子どもの頃に読んだら、さぞや夢中になったことだろうな、と思いつつ、今でも楽しく読みました。何もかも初めて見る外の世界。自分とは全然違う生活をする人々との出会い。そして、手痛い教訓。ドナータの経験するすべてが、とても生き生きと、色彩豊かに描かれていて、当時のヴェニスの街が目に見えてくるようです。そして、切ない初恋も。

当時のヴェニスの貴族には、兄弟のうち男女それぞれ1人だけが結婚し、後の兄弟は、男性はそれぞれ家業の手伝いをし、女性は1人が甥や姪の面倒を見るために家に残るだけで後は尼僧院に入るという不文律がありました。それは、財産を分散させないための知恵だったのですが、結婚できない下の子ども達にとっては、特に女の子達にとっては過酷な運命以外の何物でもありませんでした。ドナータは次女。結婚するのは姉のアドリアーナだけ……。

ところで、この時代、印刷技術はまだまだ高嶺の花です。ヴェニスの街には毎日のようにビラが配られますが、それって、写字生たちがそのまま写して手書きしてたんですねー。考えてみればそれはそうなんでしょうけれど、ちょっと新鮮でした。

話のラストは私の趣味からいくと微妙なんですが、でも、まあ、時代の縛りがあるから、これしかないかなー。文章の感じや登場人物の描き方は気に入ったので、この人の作品はそのうちまた読んでみたいです。
2005.10.22



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