ファンタジー・国内

森奈津子

ファンタジーと言うのはどうかと思うんですが、この本は他に入れようがないので一応こちらに置いておきますー。

「シロツメクサ、アカツメクサ」
光文社文庫 2006

私には二人の姉がいた。私たちは三つ子だった。
大人達にはそっくりの三つ子と言われていたけれど、実際には、私一人だけが落ちこぼれ。姉たちは何でもできたし可愛かった。でも、私だけはいつでも普通。そして、二人は仲良しで、私はたまに構ってもらえるだけの存在。だからあの日、私は……。(「シロツメクサ、アカツメクサ」)

微妙にきわどい、性愛とお笑いを追求する作家、森奈津子の、アンソロジーや雑誌に掲載された短編を集めた文庫オリジナル本です。私は実は、大昔の「お嬢さま」シリーズから読んでいまして(笑)。最近は読んでいなかったのですが、今回、タイトルにひかれて買いましたー。でもこの本、表紙が恐いです(苦)。

表題作の「シロツメクサ、アカツメクサ」は、二人の姉を失い、彼女たちをこの世に呼び戻すために妹が書き綴る、二人の姉の物語。けれどいつしか書き手は別の少女の心をまとい、己を見失う。本当の書き手は誰なのか、生き残ったのは誰なのか、すべての境界が曖昧になる……。という感じで、すべての物語が、現実と幻想もしくは妄想との境界線上を揺れ動き、時に裏返され覆されるというような作品集です。そして、耽美、というより隠微な印象がつきまとう妖しい雰囲気がありますねー。現実とは少しずれた、でもある意味、それも起こりえるかもと思ってしまうような異質を味わえる、ちょっと珍しい本かもしれません。

というわけで、でも、いつも私が読んでいる本とはずいぶん違いますね(苦)。この本に入っている9本のうちでは、私は一番おとなしい(?)「語る石」が一番好きでした。こういうおだやかな語り口の物語だと、作者の文章の一風変わった感性が一番はっきりと現れる気がします。
2006.10.15



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