SF

James Tiptree, Jr.
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア

昔はまって読んだ、寡作なSF作家さんです。
もう亡くなられています。
詳しいことはまたそのうちに(笑)。

「すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた」
浅倉久志訳 早川文庫 2004
James Tiptree, Jr. "Tales of the Quintana Roo" 1986

マヤ族の伝説を残すユカタン半島の海岸キンタナ・ロー。変わり者のアメリカ人としてそこに住まう心理学者の「私」は、人々の語る物語に惹きつけられ、ただ耳を傾ける。
浜辺を1人旅した青年は、水とグレープフルーツの礼に、ある夜、幽霊達の訪れる海岸で出会ったふしぎな出来事について語った。信じられないほどに美しい満月の夜。海面を動いていく不思議な影。謎の男が差し出す、光を宿した血のようなルビー。青年が汲み上げた、あるはずのない湧き水。

ファンタジーのレーベルから出ましたが、おそらくはやはりSFとして書かれた連作短編集です。小道具がちょっと未来。そして、ファンタジーと言っていいものかどうか微妙な雰囲気があります。奇譚集、というか幽霊譚、というか、そういう感じ。そしてそこに、メキシコの現実に対する痛烈な感情がこめられていて、素直に読むにはちょっと痛いです。現実と幻想の交錯する地で、何かの礼にと語られる物語には、失われつつあるものへの深い悲しみと、様々な憤りが隠されているのでしょう。そして、どうにもならない現実も。

語られる情景は、とても幻想的で美しいです。
海も空も、砂浜も魚たちも。物語そのものも。

キンタナ・ロー。

この地名の響きだけで、十分美しいですよね。
2004.11.14



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