SF

Philip Reeve
フィリップ・リーヴ

多分、一応SF扱いでしょう。というわけでこちらに。まだ1冊しか読んでいません。これからの人かなー。

「移動都市」
安野玲訳 創元SF文庫 2006
Philip Reeve "Mortal Engines" 2001

地上のほとんどを壊滅させ、大変動をもたらした「60分戦争」。辛くもその時代を生き延びた人間達は、不安定な地上に留まることを諦め、各々の都市を「移動都市」化し、都市ごと地上をさすらいながら暮らすようになっていった。だが、資源も物資も限られた空中での生活はやがて、都市同士が食い合う「都市淘汰主義」を台頭させる。都市が都市を狩り、狩られた都市は狩った都市に食い尽くされるのだ。
都市の淘汰が進み、獲物が少なくなって動けなくなる都市も増え続け、定住を望む人々が移動都市と争うようにもなってきた時代、世界で最初に移動都市となった歴史ある移動都市ロンドンに生まれ育った史学ギルド見習いの少年トムは、敬愛するギルド長を暗殺者の少女の手から守ったために、彼女と共に地上に落とされてしまう。折しもロンドンは、野心的な市長の計画の元、新たな狩り場に向かって高速で動き出していた……。

文明が一度失われかけた遠未来の地球を舞台にした、少年少女の冒険物語です。陰謀や裏切りが生々しく描かれるお話で、読む前に想像していたのとはちょっと違いました(笑)。でも、なかなか面白かったです。

空の上を移動していく都市というと、やはりアニメの「ラピュタ」の印象が強いですよねー。この物語に出てくる「移動都市」はあれをもっと巨大に、機械っぽくしたものという感じでしょうか。そういえば、全体的に「宮崎アニメ」な雰囲気が(笑)。一時流行っていた「スチームパンク」(蒸気機関のまま発達した世界を描くSF)とも近い印象。ちょっと懐かしめの、セピア色の雰囲気。で、空を飛んでいる、と(笑)。でも、食うか食われるかの過酷な時代なんですよね。

都市から落ちた主人公のトムとへスター(ギルド長を暗殺しようとした少女)は、共に地上を歩き、別の都市に拾われ、売り飛ばされそうになって逃げ、という、一瞬も油断できない危険な旅をしてロンドンを目指します。ギルド長が放った追っ手は古代文明の遺産でもある機械戦士。彼はかつて、へスターを拾って守ってくれた相手でした。物語は、彼らの旅と、ロンドンで父の秘密を追うギルド長の娘キャサリンを中心に、めまぐるしく展開されていきます。

というわけで、私は実は、キャサリンの方が好きでした(笑)。腹黒い野心家の父親に、「この子には汚い物は見せたくない」一心で大切に守られて育った、正義感あふれる女の子。なんだか私はそういう子に弱いです。へスターはこれまでの人生でひどい思いをいっぱいさせられて、傷つけられて、かたくなになっている女の子。彼女がだんだんトムのことを信じるようになっていくところは、確かにとても素敵なんですが、どちらを選ぶかと言われたらキャサリンかなあ、と。この辺は、本当に好みの問題ですよねー。

作者はもともとイラストレーターだったということで、文章はかなり映像的です。映画的と言ってもいいかな。読んでいて、そのまま画像になって頭の中に浮かび上がるような感じ。迷宮のようなロンドンの下層も、空を飛ぶたくさんの都市のイメージも、トムが驚きを持って見つめる、反移動主義者達の住む地上の都市の景色も、それぞれに印象的で、不思議な魅力があります。私は高所恐怖症なので、できれば地上の都市に住みたいですけどね(笑)。

ひとつ難点を言うなら、この物語、人が死にすぎですー。
そういう時代を描いていると言われればそれまでなのですが、本当にあっけなく人が死ぬ。私にはそこがちょっとひっかかりました。

遠い遠い未来の、頑張る少年少女の物語。
英語でまで読もうとは思いません(っていうか、この手の本は私には難しい)けれど、続きが訳されたらまた読んでみます。
2006.11.19



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