ミステリー

太田忠司

何故だかあまり知られていない(気がする)のですが、現在の日本のミステリー作家の中では、私のお気に入りの1人です。人物がいいんですよね、この方の作品は。
ジュブナイル小説を思わせる楽しい作品も多いし、本格推理もあります。そのうち徐々にご紹介していきたいです。

「新宿少年探偵団」
太田忠司著 講談社文庫 1998
シリーズ続刊中。初版は新書で刊行されてます。

江戸川乱歩の「少年探偵団」にハマったことのある方にはおすすめのシリーズです。謎の怪人、マッド・サイエンティスト、超科学、秘密基地と魅惑的な小道具たち(笑)、といったおいしいアイテム満載の「少年探偵団もの」。作者は本格ミステリーの人(?)なので、荒唐無稽な設定とはいえ、お話の骨格はきちんとしていますし、キャラクターも一癖も二癖もあって楽しいですよー。舞台はもちろん現代の新宿。主人公たちは物語の最初では中学2年生。ホラーとして出版されたようですが、大丈夫。どなたにでもおすすめできます。

探偵団は全部で4人。プラス、謎の美少年「蘇芳」と彼に仕える紳士ジャン・ポール。私はやっぱり主人公の壮助くんを応援しています。あははははは。


「狩野俊介の肖像」
徳間文庫 2004(初版は徳間書店 1996)

遠島寺美樹は、中学校で飼育部に入っている。廃部寸前の小さな部だが、彼女はずっと生き物を飼ってみたかったのだ。しかし、中学校に飼育小屋? という周囲の目は冷たく、学校側も何とか廃部に持ち込もうと狙っていた。その矢先、彼女が飼育当番に当たっていた日に、禽舎の中のカナリアが行方不明に。疑いは彼女に向けられ、部にも廃部の時が迫る。彼女は、以前からの知り合いである狩野俊介に助けを求めることにした。同じ中学の目立たない学生である彼は、実は有能な探偵なのだ。しかし彼は、学校内ではただの学生でありたいとずっと思っていた……。

名探偵狩野俊介シリーズ番外編、俊介の中学生としての日常を描く短編集です。と言っても、シリーズ自体を知らない方の方が多いかもしれません。太田忠司、私は昔から大好きな作家さんなんですが、なんだかマイナーなんですよねー。そこがいい、とも言いますが(笑)。私は途中から、文庫になると買うという形で追いかけてきました。でも、ここしばらく怠けていて、この本も長いこと積んであった本です(苦)。読んでみると、やっぱりいい感じなんですけどねー。

探偵としての自分の能力を隠して、普通の学生生活を送ろうとするお話、というと、「いちごタルト事件」もそうでした。現実生活の中で、探偵を必要とするような事件がそうそう起こるとは思えないけれど、もし本当に探偵が身近にいるとしたら、やっぱり人は色々と推理してくれることを期待するものなのでしょうか。そして探偵は、孤独感や疎外感を感じてしまうものなのでしょうか。見えてしまう、わかってしまうが故の苦悩と困難。根っこのところで同じテーマを扱うこの2作品、雰囲気は随分違いますが、読んでみるとやはり近しいものでした。ああ、なるほどなあ、という感じ。どちらが好きかと言われたらこの本の方を選ぶのは、私がこの作者の視線の方が好きだからなのでしょうね。どちらも面白い本でしたが。

目立つ人間は嫌われる日本の学校。先生に気に入られなければ成績に響くし、気に入られすぎれば他の生徒達に「先生の手先」と思われる。何をしてもしなくても、歯車が1つ狂っただけで学校生活は地獄になる……。
読んでいて、ちょっと、思い出したくない日々のことを思い出しました。
今の学校はもっと大変みたいですよね。
ナンシー・ドルーやハーディ・ボーイズを読んでいた頃には、探偵が学校で嫌われるなんて思ってもみなかったなあ、と思ったりします。あ、少年探偵団も(笑)。
そういう切り口であの辺を読み直すのも、なんだか楽しそうですね。
2006.02.10



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