ミステリー

Laurie R. King
ローリー・キング

オリジナルのミステリも書いている実力派の作家さんです。
でもなんと言っても私には「シャーロック・ホームズの愛弟子」シリーズ。

「シャーロック・ホームズの愛弟子」 山田久美子訳 集英社文庫 1997
"The Beekeeper's Apprentice" 1995
「シャーロック・ホームズの愛弟子 女たちの闇」 
山田久美子訳 集英社文庫 1999
"A Monstrous Regiment of Women" 1995
「シャーロック・ホームズの愛弟子 マリアの手紙」 
山田久美子訳 集英社文庫 2000
"A Letter of Mary" 1996
「シャーロック・ホームズの愛弟子 バスカヴィルの謎」 
山田久美子訳 集英社文庫 2002
"The Moor" 2002
「シャーロック・ホームズの愛弟子 エルサレムへの道」
山田久美子訳 集英社文庫 2004
"O Jeresalem" 2002

事故で両親を失い、サセックスの田舎の家で伯母と閉ざされた生活を送っていたメアリ・ラッセルは、ある日偶然、近くの農場で隠退生活を送るシャーロック・ホームズと出会い、彼から探偵術の手ほどきを受けることになる。
卓越した知性と、強靱な意志、そして、忍耐。彼女はやがて、オックスフォードの学生となり、そのかたわら、ホームズの助手を務めるようになるが……。

このシリーズ、「聖典以外は認めん」というどこまでも純粋なホームズファン以外の方にはおすすめです。特に「ホームズの相棒になって、一緒に冒険してみたい」と一度でも思ったことのある方(特に女性)にはとってもおすすめ。著者は現代物のミステリーでも人気のある筆力のある作家さんですが、多分本人もそう思って書き始めたんだろうなー、とか思ってしまいますね(笑)。ホームズ、かっこいいです。でも私、TVシリーズの見過ぎで頭の中であのホームズになっちゃうんですよね。もちろんあの声(日本語吹き替えの)で。

翻訳が止まってしまうようなことがあったら、英語で読むしかないなー、と思っていたのですが、とりあえず最近、新刊が出たので一安心。このシリーズはちょっと大変そうです(笑)。翻訳者さん、ありがとうー。これからもよろしくお願いしますー。

「侯爵家の相続人:シャーロック・ホームズの愛弟子」
山田久美子訳 集英社文庫 2006
Laurie R. King "Justice Hall" 2002

バスカヴィルの骨の折れる事件を終え、ダートムアから我が家へ戻ったラッセルとホームズ。少し休めばまたすぐにじっとしていられなくなるとわかってはいるが、今はただ休もう。そう思っていた。しかしその夜、思いも寄らぬ人物が2人に助けを求めてきた。流行遅れのイギリス人の服装、言葉はイギリス人の英語、きれいに剃られた髭。だが、彼の手首にはラッセルのつけた傷が残り、その目の中にはかつての火花が残っている。彼は、かつてパレスチナを訪れた2人と共に旅をした2人のベドウィンの1人。アリー・ハズルだった。かの地で、どこからどう見てもベドウィンだった彼は、実は由緒ある貴族の家柄の生まれのイギリス人であり、彼の従兄弟、マフムードは、今やその家を継ぐ身であるというのだ。そして、アリーは、家に縛られようとしているマフムードを助けてくれと言う。ラッセルとホームズは、すぐに荷物をまとめ、アリーとともに侯爵家の広大なカントリーハウス「ジャスティス・ホール」へと向かうが、そこには……。

というわけで、今回はイギリスの侯爵家の跡継ぎ騒動のお話です。そしてまた、第一次世界大戦中の、戦場の不条理や厳しさのお話でもあります。相変わらずの詳細な記述。イギリスの田舎の、息をのむような美しさ。人の心の妙。読み手の心をとらえる力のある文章で描かれる、鮮やかな物語でした。

前作「エルサレムへの道」で語られた冒険の相方、マフムードとアリー。彼らはラッセルとホームズを「兄弟」と認め、友情を結び合った相手でした。お互いの実力を認め、信頼しあえる相手。だから、様々な感情を越えて、アリーは2人に助けを求めてきたのです。彼らの正体はホームズにとってすら驚きでしたが、もちろん2人は友人に力を貸すために出かけます。そこには更なる驚きが待っていました。それでも、かつての友情のために、分かち合った思い出のために、マフムードは語り、ラッセルとホームズは動き始めるのです。

今回、どちらかというとお話は小粒です。後継者騒動の展開も、割とよくあるパターンだと思いますねー。ロマンス小説にありがちな設定というか、何というか(笑)。ただ、登場人物達の感情の動きや、様々な思い、描写の確かさが、物語をありきたりのものにすることから救っているのでしょう。ちなみに、ホームズ、相変わらず素敵です。ラッセルとの関係もすっかり落ち着いてきて、こんなに事件ばっかり続かなければ、まずまず平和な家庭生活なのかなあと(笑)。すーぐ退屈していらいらし始めるのかもしれませんけど。

どんな生活を、どんな生き方をするのかは、本人が選ぶことです。けれども、自ら選んでそれをしているとしても、幸せであるとは限らないし、見ている側からすればあまりにも痛々しいときもある。そんなとき、見ている側はどうすればいいのでしょう? 黙って本人の意志に任せるべきなのでしょうか。それとも、何かの役に立つことを願って、動いてみるべきなのでしょうか。

難しいことはさておき、やっぱり読んでる間は幸せでした。お気に入りのシリーズは、いつ読んでも嬉しいものですね。
2006.09.23



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