ファンタジー・国内

宝珠なつめ

今のところ、「おもひでや」だけ読んでいます。ちょっと気にあるけれど、まだまだかな。

「天国の対価:おもひでや」
中公ノベルズ 2006

ただの与太話だろうと思った。姉の入院する病院でたまたま耳にした、都市伝説のようなうわさ話。けれども、もし本当にそんな店が存在するのなら、それを商品として売ってもらえるのなら、僕にはどうしても売って欲しいものがあった。死の床にある姉との、果たせなかった約束。もしかなうものならば、それを、売ってもらえるものなら……。

先日、2巻目を先に読んでしまった「おもひでや」シリーズの1巻です。ちゃんと探したら、売られていました(苦)。そして、やっぱり、最初からちゃんと読んだ方がよかったようです。こちらの方が、ある種の救いがある話が多くて、導入部としては正しい感じ。謎は謎のままなんですが、途中から読むよりはやっぱり、と思いました。

思い出作家サナギの手から流れ込む、起こらなかったことの記憶。それは、受け取った人の心に刻み込まれ、一生忘れられない思い出となる。

現実に起こったことの記憶でさえ時に重たいのに、買ってまで思い出を増やしたくはないなあ、と思わなくもないです。でも、何度も何度も思い出して、それで元気が出せるような思い出を売ってもらえるなら、幸せなのかもしれない。もっとも、もっとぎりぎりの何かを抱えた人にしか、「おもひでや」は姿を現してくれないのでしょうね。

ところで、店長の「テン」さん。文章から受けるイメージとイラストがすごく違う気がするんですけど、気のせい? 私だけ?(笑)。
2006.09.10

「記憶の繭:おもひでや」
中公ノベルズ 2006

人に「思い出」を売ってくれる店「おもひでや」シリーズ第2巻らしいです。らしい、というのは、実は私はこれが1巻なんだと思って買ってしまい、そしたらどうやら前の巻があったらしいことがわかったという……。読み切り短編連作タイプの本なので、別にここから読んでも何の不都合もなかったですが、そのうち1巻も読もうと思います、はい。

直前でキャンセルさせられてしまった、大好きなあのひととの結婚式。自分でウェディングドレスも縫って、ずっと楽しみにしていたのに。2人でその後ずっと幸せに暮らしていくはずだったのに。パパもママも「あの人のことは忘れなさい」って言う。どうしてわかってくれないの? 私達は幸せになるのに。
どうしても、結婚式がしたい。その思い出が欲しい。あのひととの、幸せなお式の思い出が。だから……。

そうやって、人は「おもひでや」のドアをノックする。中には穏やかな店主のテンと明るい中性的な美少年クレオ、そして人形と見まごうような無表情な美少女の「思い出作家」サナギがいて、客の求める思い出を、心の中に刻み込んでくれる。

というようなお話です。
思い出を買いたいって、どういう時でしょう?
人生に何一ついい思い出がないから最後にひとつくらい、ということもあるでしょうか。
自分が買うとしたらどんな夢を? って、読み終わった後色々考えてみましたが、これといって思いつきませんでした。ということは、私はやはり平凡にそれなりに幸せな人間だということなのかもしれませんねー。

思い出を買うことで、幸せになれるか、逆に不幸になってしまうのかは、その人次第です。この本では、どちらかというと悲劇の印象が勝りますが、もし現実にこんなお店があるとしたら、幸不幸は半々なんじゃないかなあと思います。それが人生というものだから。自分で選んで自分で買ったなら、そこから生じる結末も甘んじて受けなければなりません。でも、できることなら、幸せな結果に終わって欲しいものですよね。

安くはないけれど払えないほどではない、という金額で売ってもらえる、望みのままの「思い出」。
やっぱりちょっと、危険すぎるかな。
2006.09.02



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