ファンタジー・国内

深沢美潮

明るく楽しい、どことなくほのぼのしたファンタジーを書く作家さんです。でも、何故か、こちらでご紹介してるのは普通の高校生のお話(笑)。

「サマースクールデイズ」
ピュアフル文庫 2006(元本は幻冬舎 2002)

内気で、思ったことをなかなか言葉にできない千里は、高校に入った途端、ずっと一緒にいてくれた幼なじみに嫌われてしまい、ますますひきこもりがちになってしまった。最初は本当に熱を出して休んだのだが、それからだんだん学校に行くのが嫌になって、不登校のレッテルを貼られてしまったのだ。そんな彼女に、母親は、ちょっと離れた町にあるアメリカンスクールで行われるサマースクールに参加するようにと言う。不安だけれど、このままの自分でいてもダメだってわかっているから、勇気を出してみようと思った千里。だが、そこには彼女の悪口をいいふらしている幼なじみの姿もあって……。

私には「フォーチュン・クエスト」その他でファンタジー作家の印象の強い深沢美潮ですが、この作品はごく普通の世界の普通の少女の夏休みの2週間を描く、ジュブナイル小説です。文体はファンタジーの時とそんなに変わりませんが、もっと内省的で、気持ちの動きに丹念な感じかな。そんなに特別なテーマを扱っているわけでもないけれど、さわやかなやさしい読後感のある作品です。

内気で何も言えなくて、いつも小さくなっている千里。友達にいきなり冷たくされて、悪口を言われても、「どうして?」と聞きにも行けないし、びくびくおどおどと殻に閉じこもってしまいそうになる。サマースクールでも、幼なじみを見た途端に心がすっと冷たくなって、逃げ出してしまいたくなる……。そういうの、なんだか自分を見ているようで(笑)、ちょっと痛かったですねー。不幸な自分しか見えないのも、他の人はみんな幸せなんだろうって思ってしまうのも、若さの特権でもあるし、いつかは越えていかないといけない壁でもある。ちゃんと気がつくことのできた千里がこの後どうなっていくのか、楽しみです。

実際の人生は、お話みたいにうまくはいきません。
でも、子供の頃には信じていたかった。信じていた。
いつまでも心に残る、きらきらの夏休み。
もう、夏なんですよね(笑)。
大人って、そういうところ損です。
2006.06.14



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