ファンタジー・国内

梨木香歩

これまでこのページ作ってなかった……?(遠い目)。
和製ファンタジーの人気作家の1人、梨木香歩。私は文庫になった分を中心に読んでいます。
そ、そのうちにー。

「家守綺譚」
新潮文庫 2006(単行本は新潮社 2004)

100年と少し前の、日本の田舎町。駆け出し作家の綿貫征四郎は、若くして亡くなった友人の家の家守を頼まれ、ありがたくその仕事を引き受けた。四季折々に花の咲く、池のある庭のある二階建ての家。庭の手入れはご随意に、と言われたので手を入れないでおいたところ、草木はやけに勢いよく育っている。
ひっそりと静かな、1人住まいの日々。そして、そこを訪れてくるのは、河童や小鬼、人の姿をとった不思議なものたち、そして、今は亡き親友……。

今はもう遠い昔の、でもやっぱりどこか懐かしい時代が舞台の、八百万の神々、というか様々なあやかし達が、ごく普通の存在としてそこにいる物語です。サルスベリ、都わすれ、ヒツジグサ、……etc。その季節に咲く花、育つ植物の名前と共に語られる、日常の小さな出来事たち。ささやかな不思議と、季節の移ろい、過ぎていく時間の流れ。それは、今の時代の私達が、後ろに置いてきてしまったものなのかもしれません。

少女や若い女性を主人公にしたファンタジーを中心に発表していた梨木香歩の、これはある種の、新境地を開いた作品だったのでしょうか。それとも、私が知らないだけで、他にもあったのかもしれませんね。とりあえず、そういう感じで、この本、これまで私が読んだこの作家さんの作品とはかなりトーンの違う、静かで美しいお話でした。「おばあさん」が出てこないのも珍しい(笑)。全体的な雰囲気が、この間読んで気に入った「いつか王子駅で」と近しいものがあって、この本も、やっぱり静かな幸せな気持ちを与えてくれるものでした。

とりあげられている花は、さすがに昔からの花で、名前は私もみんなわかりました。ただ、ヒツジグサはちゃんと見たことはないし、ネズの木も、見てもきっとわからないだろうなあ。他は一応(笑)。でも、このサイトでご紹介したことがある花は半分くらい? 南蛮ギセルとか、知ってるけど見ないよなーって感じですねー。カラスウリだって、最近はこの辺では全く見ませんし。うーん、見かけたら頑張ります(笑)。

こういう本を読むと、ちょっと庭付き一戸建てに住みたくなります。でも、私には絶対無理(苦)。それだけは、はっきりわかっているのでした。
2006.10.01

「この庭に 黒いミンクの話」
理論社 2006

2007年のお正月読書本でした。
「からくりからくさ」関連本。一連の作品のネタバレを避けたい方は、この先は読まないでくださいねー。時系列でいくと、「ミケルの庭」よりも更に後の時期のお話になります。

すべてから逃げ出したくて北方の国を訪れ、雪が積もれば閉じこめられてしまうような小さな家を借りた私は、日々を酒とオイル・サーディンだけで過ごしていた。サーディン達は、時に私の中から泳ぎ出し、自在に辺りを泳ぎ回ってはまた私の中に戻る。やがて、雪が降り出し、そして少女が現れた。日本人形のような白い顔をした、小さな女の子。彼女は「この庭に、ミンクがいるような気がしてしようがないの」と言った……。

絵本のような仕立ての、短いお話ですので、これ以上書くとどうやってもネタバレになってしまいます。でも、ええと、そうですねー、「からくりからくさ」や「ミケルの庭」の最後で、私がちょっと心配していたことがあります。それは、「もしこの子(ミケル)が、彼女たちとは別の種類の女の子だとしたらどうなるんだろう?」ということでした。持って生まれた性格は動かせない。もちろん、遺伝があるから、すごく違うってこともないかもしれないけれど、もし違ったら? 例えば、両親と意見が違うだけでもめちゃくちゃ大変なことになるのに、それが4人も……? と、大きなお世話なことを心配したわけなのでした(笑)。そして、それはやっぱり、作者にとっても気になるところだったのかもしれません。

というわけで、お正月本としてはちょっと外したかなあと思った私です(苦)。それぞれのシーンや、挿絵と組み合わさったしんとした雰囲気はとても素敵なんですが。で、特に私は、サーディンが泳ぎ回るところが好きです。なんだか、妙にひかれるところがありました。何でかなあ?(笑)。

ハードカバーの本って、滅多に買わないし、お正月じゃなかったらこの本も買っていなかったと思うのですが、こういう本はやっぱり、絵があって紙にそれなりの厚みがあって、というものだと思いますので、このスタイルで読む方が正しいんでしょうねー(苦)。ええと、図書館で借りた、ブッカーで固定された本でないのなら、読み終わったらカバーをめくってみましょう(笑)。意外といるんですよねー、カバー外してみない人って。3分の1くらいの確率で損すると思うんですけど、そういうの(笑)。

無意識のうちに、誰もが誰かを傷つける。お互い気がつかなかったとしても、傷はどこかに残り、いつか何かのきっかけで現れて痛みをもたらす。
子供は自分で自分を守れないから、余計につらいですよね。
2007.01.01



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