ファンタジー・国内

瀬名秀明

ホラーじゃないです(笑)。

「八月の博物館」
角川文庫 2003.6 (単行本も角川書店から 2000.10)

   「きみが願えば見えてくる。必要なときに、
    君が必要とする人間が見えてくる。
    いつだってそうだ。すべては君の好奇心から始まる」

小学生最後の夏休みがはじまる日、校門を出ようとした亨は、「校門を出て左側」に今まで一度も行ったことがなかったことに突然気がついた。6年近く通っているのに、本当に一度も。

そのときのちょっとした事情もあって、思い切って左に進んでみた亨が見つけたのは、そんな場所にあるはずのない不思議な博物館。一度は驚いて逃げ帰り、それでもやっぱりもう一度そこを訪ねずにはいられなかった彼は、そこで1人の少女に出会い、ともに忘れられない夏休みを過ごすことになる。

そこは、「博物館の博物館」。過去と未来の様々な事物が交差するところ。古代エジプトの神、聖牛アピスの謎を求めて、少年達の一夏の冒険が始まる。

と、こんなふうに書くと、すっかりジュブナイルの冒険もののようですが、実はこの物語にはいくつか仕掛けがあって、要所要所に、「その物語を書いている」小説家の青年の苦悩や現実が語られる、全体としては割と大人向けのタイムトラベルファンタジーです。SF、と言ってもいいですが、私としてはこれはファンタジーかな、と(笑)。作者は言わずとしれた『パラサイト・イヴ』の方ですが、この本は全然雰囲気の違う、夏休みのわくわく感がいっぱいつまった、なんだか懐かしい感じのお話。博物館好きにはこたえられない、夢の博物館の物語でした。物語の構成上、結構ひんぱんに現実に引き戻されちゃうのが、個人的にはちょっとつらかったんですが、でも、面白かったです。

ところで私は、この中に出てきた「この世で最後の博物館」のことが妙に気になっています。それだけで1本の物語になりそう。本筋とは全然関係ないんですけどね(笑)。



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