SF

Robert A. Heinlein
ロバート・A・ハインライン

誰もが認めるSF界の巨人。学生時代に、結構読みました。私はアシモフやクラークよりもこの人の作品の方が好きでした。何となくですが。

"The Door Into Summer" 1957
「夏への扉」 福島正実訳 早川文庫 1979

独立独歩を望む天才技術者の「僕」は、親友と婚約者に裏切られ、失意のあまり発作的にコールドスリープに入ろうと決意する。眠る時間は30年。2000年に目覚めて新たな生活を建て直すのだ。もちろん、愛猫ピートも一緒に。
しかし、装置に入る前日、ふと思い直して親友に事の次第をただしに行った僕は、元婚約者の魔手にかかり、ほとんど身一つで未来に送り出されてしまった……。

猫好きにはあまりにも有名な、ハインラインの名作です。
あ、いえもちろん、SFファンにも有名です。沢山ある外へのドアのすべてを開けて確認するまでは、その中のどれか一つくらいはは夏につながっているのだろうと固く信じている猫のピートと、彼に付き合って辛抱強くすべてのドアを開けてあげる「僕」。世の中には「猫の好きな人」と「それ以外」しかいないと言い切るハインラインは、きっととっても猫が好きだったのでしょう。気持ちはわかります(笑)。

それにしても、大昔には何度も読んだはずなのに、ほとんど忘れていました。うわー、こんな話だったのねー、みたいな? ドアのことと、猫と一緒にコールドスリープ、ということだけをよく覚えていて、主人公の様々な発明とか、タイムトラベルとか、もうすっかり忘れてました。もっとすれ違いドラマのような気がしていたし(笑)。老化は既に始まっていますね、危険です。

この物語、1950年代後半に書かれた、「ちょっと未来」が1970年、「かなり未来」が2000年という時代のSFです。だから、今はもうその「未来」も過ぎてしまっている。ハインラインの想像した未来は、現実よりもずっと牧歌的で、それでいて便利。もちろん、現代の方が進んでいる部分も(コンピューターとか)あるのですが、それが人を本当に幸せにしたかどうかを考えるとき、やっぱり何かが間違っているかもしれないな、と思います。主人公ダンのような発明家がちゃんといてくれたら、私が苦労して掃除をすることもないのに(爆)。

ハインライン、何て言うか、全体に明るくてさばさばしていて、久しぶりに読んだらやっぱり楽しかったです。猫を語る時と、ロボットを語るときの熱狂的な口調がえもいわれず(笑)。ところで、書誌情報を見るために文庫版を掘って、ついでに中身を見てみたら、"Hired Girl"は「文化女中器」(これにハイヤード・ガールとルビをふる)。ぶ、文化鍋……? 日本語の方がやっぱり隔世の感がありますねー。英語で読んでいると、自分がわかってないのか英語が古いのかわかりませんから(笑)。

英文自体は、アバウトな私にはとても簡単な読みやすい文章でした。私は未来語も猫語も「なんとなくこんな感じ?」という程度で読み飛ばしますしね(笑)。少し古い時代の本なので、省略も少なく、会話も文章。明瞭で主張のはっきりした文体という感じでした。問題は、日本語であれ英語であれ、作者の描いた「時代の風景」をイメージできるかどうかかもしれません。作者のいた、50年代の政治や思想が、その時点の作者にとっては未来であった70年、そして、2000年にも影響していて、その辺を考え始めると難しい。私はホーガンの時と同じく、政治的歴史はさっくり無視しました(笑)。

今となっては懐かしい、でも、今読んでも十分楽しい未来の物語。どうぞお楽しみください。
2005.05.21



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