ファンタジー基本図書?


「火星年代記」

「火星年代記」
レイ・ブラッドベリ著 小笠原豊樹訳 早川文庫 1976
"The Martian Chronicles"
Ray Bradbury 1950

1999年の1月は、ロケット・サマーと呼ばれた。
人類初の有人宇宙船が、火星に向けて飛び立ったのだ。偉大なるロケットの熱は街に暖かい風をもたらし、ひとときの夏を生んだ。人類の憧れを集めて火星に降り立った乗組員達。しかし、そこには、彼らを認め、歓迎してくれる人々はどこにもいなかった。
火星には火星人が住んでいた。古く美しい文明を築いた、穏やかな人々。だが彼らと地球人の出会いは、お互いに不幸をしかもたらさなかった……。

ええもちろん、SFの古典のひとつです(笑)。でも、私にとってはこの本は、まぎれもなくファンタジーの基本図書の一つに数えられます。だから、無理矢理ここに。ファンタジーかSFかというのは、設定や作者の志向の問題で、あんまり区別に意味はないかなと思っていたりします。

ご紹介するまでもなく有名な、ブラッドベリの傑作。1999年から2026年までの様々な時間を切り取って描かれた連作短編集です。私が最初に読んだのは、中学の頃だったと思います。一番はまっていたのは大学の頃でしょうか。確か、TVシリーズでもやっていましたよね。そちらは、なんというかちょっとホラーな印象がありましたが(笑)。

何度も読んだはずなのに、「美しかった」ことしか覚えていなかったのですが、読み直してみたら、ずいぶん皮肉に満ちた、苦い物語でした。子どもの頃はおそらく読めていなかったのでしょう。大学時代はどうだったのかなー。読み切れていなかったのかもしれないですね。火星の風景のおそろしいほどの美しさだけを味わっていたのかもしれません。滅びの美学、とでもいうのでしょうか、その美しさは他を圧するものがあります。でも、この本のほとんどを占める地球人の物語は、読んでいて時々いたたまれない気持ちにさせられるほどに苦々しい、厳しい物語でした。書かれた時代もそうだったのでしょう。何もかもぶちこわし、結局は自分たち自身も壊してしまう地球人。結構、強烈です。

でも、世界は、やっぱり美しい。
特に火星人関係は、彼らの残した都市を含めて本当に美しいです。物語全体も、調和がとれていて美しい。ああ、本当にすごいなって思います。

それで、一応英語でも読んでみました。
なんていうのかな、その文章を読むことによって生じる「場」のようなもの力がとても強い文章でした。強力なイメージの磁場というか、何というか。それにとらえられてしまえば、意味がわかっていようがいまいが、ひきこまれてそのまま読んでしまうことになるのではないかと思います。少なくとも、私はそんな感じでした。でも、そういうのって、はまれるかどうかで明暗分かれちゃうってことでしょうか。
2004.11.17英語版読了。



トップへ
戻る
前へ
次へ




SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送