ファンタジー基本図書?


「ゲド戦記」

「影との戦い」、 「こわれた腕環」、 「さいはての島へ」、
「帰還 ゲド戦記最後の書」、「アースシーの風」
アーシュラ・K・ル=グウィン作 清水真砂子訳 岩波書店

竜が住み、魔法使い達が存在する異世界アースシー。
数多くの優れた魔法使いを生み出してきたというゴント島に生まれた少年ゲドは、持って生まれた才能を認められて大魔法使いオジオンの弟子となり、やがて世界最高の学校であるローク島の「学院」に学ぶことになる。だが、優れた才能を持ち、やがては当代最高の魔法使いに数えられるだろうと認められる彼の中には、消すことの出来ない影が存在していた・・・・・。

内容は今更私がご紹介するまでもないですよね。
このシリーズは私にとっての3大ファンタジーのひとつ(他は「ナルニア国物語」と「指輪物語」)。他のどんな本とも一線を画す、「格が違う」ファンタジー作品です。

実は、私はこのシリーズ、初めて読んだ頃は「嫌い」だったんです。「苦手」と言ってもいいかな。煙に巻かれたような気がしていたし、キャラクターの自我が強すぎて読むのがつらかったのだと思います。初めて読んだのは中3か高1ぐらい。このシリーズよりもずっと前に「指輪物語」を読んでいましたが、私にとってはこのシリーズの方が難解に感じられたことを覚えています。

大人になってから(?)は初めて読み返してみると、色々なことがクリアになったような気がしました。昔は主人公にだけ焦点を当てて読んでいた部分をもっと広い視点から読めるようになったからでしょうか。賢人達の言葉も、今なら煙に巻かれることなく読みとることができるような気がします。改めて、深い物語だと感じました。語られるひとつひとつの言葉に意味がある、本当の物語ですよね。

1巻目は英語でも読んでみました。
"A Wizard of Earthsea" 1968

ええとー、正直言って、英文自体は「指輪」よりずっと簡単だと思います。でも、そのままがーっと飛ばして読める本ではないし、語られる言葉の意味をちゃんとわかっていないと、何が何だかわからない。そういう意味では、楽しんで読むために求められるレベルは高いです。それが「指輪より難しい」ことの理由になるのかも。なるほどなー、って思いました。

でも私、この本は日本語訳が好きだったような(爆)。冒頭に掲げられた「エアの創造」、あれって、私には日本語の方がずっと印象的です。意味は同じでも、心に響く部分が違う。本当は、英語で読んで受ける印象の方が、作者の考えには近いのでしょうけれどもね。
2004.11.21英語版読了。

4巻目と5巻目については、近年読んでそのときの感想が残っていますので、下にあげておきます。

「帰還 ゲド戦記最後の書」

読み始めた途端「しまった、こっち路線だったのか」と思ってしまった私です。何ということでしょう。忘れていました。以前は私はル・グウィンのSFも沢山読んでいたのですが、こっち路線が強くなってからは苦手になって読まなくなってしまっていたんです。考えてみれば、4巻目が書かれたのは確かにそうなってからで、今回のこの本が私の苦手路線である可能性はとても大きかったのでした。ふうううう。フェミニズム問題って言うのかな。どんなにいい物語でも、そして、根幹にこの問題が据えられているが故の深い物語であっても、私はこの問題が前面に押し出されたものが苦手です。大切な問題であることも、自分でも考えなければならないことだとわかってはいても、だからこそ、フィクションの中でまで追いかけられたくはない、と思ってしまいます。ただの甘えですけれど。

そんなわけで、最初から色眼鏡で読み始めてしまいまして、やっぱりかなりつらかったですが、物語そのものは相変わらずすごいなあ、と思いました。問題の掘り下げ方が違います。世界の連関が違います。手触りさえ感じられる別世界がそこにあるという、その感覚が違います。今回はまた「竜」の存在が圧巻でしたね。「さいはて」でも印象的でしたけど、ちょっと違った意味でくるものがありました。で、初夢にも見てしまったみたいです。初春から縁起がいいです(笑)。

情緒的な面を言うと、良くも悪しくも登場人物達の感情が生々しすぎて「痛い」物語でした。何故彼らはそうやって苦悩し続けなければならないのだろうと思わされてばかりです。彼らのためにも、私の心の平安のためにも、4巻目は書かれない方が良かったのかもしれない、とまで思ってしまう程でした。もちろん、救いはもたらされるのですが、それでも、これはきついです。そこまで感情移入させる著者の筆力は大したものだ、という冷静な判断に逃げてしまいたくなりますね。私は本をハイペースで読むかわりに何度も読む読者なんですが、この本を再読するには、少し間を置く必要がありそうです。しばらく毒にも薬にもならない本を沢山読んでから(笑)、チャレンジしてみます。

ところで、このシリーズ、「小学6年、中学以上」なんですよね。そのあたりの年齢の皆さんは、今読んでどんな感想を持たれるんでしょう? 昔の私だったら、やっぱり「嫌い」(でなければ、「王様がかっこいいから許す」)だったんだろうなあ。単純な子どもでしたから。かといって、その頃にこのシリーズを読んだことを後悔したりはしませんけどね。大人になって読み返して、もう一度楽しめるような本に早いうちから出会えることは、とても幸運なことです。たとえ最初は「嫌い」(笑)であっても。え? 今ですか? 今は………。超おすすめではありますけど、「好き」とは別次元かも。もう、「嫌い」でも「苦手」でもないですけどね。


「アースシーの風 ゲド戦記 V」

引退して故郷の島で余生を送るゲドのもとに、ある日、ハンノキという魔法使いがやってくる。彼は、愛する妻を失って以来、夜毎に不思議な夢を見続けていた。一方、レバンネン王のもとにはテナーの故郷である南方の国から、ベールに包まれた1人の王女が送り込まれてくる。そして、西方では再び竜が………。

かつてゲドが訪れた「死者の国」の謎、竜と人との関係や、魔法というものの謎、そうしたすべてが語られる、ゲド戦記の最新巻です。4巻が出たときにびっくりしていたので、5巻が出たと知ったときにはあまり驚かなかったような記憶が(笑)。でもやっぱり、ちょっとびっくりですよね。なんと言っても、4巻は「最後の書」だったわけですから。

この本については、語ると色々墓穴を掘ることになりそう(笑)なので、とりあえず、ぜひ読んでくださいね、というだけにしておきます。できたらもちろん最初から全部読んで、浸ってみてください。読んでいる自分の周りの空気まで変わるような、そんなシリーズです。でも、1日でまとめ読みすると知恵熱出るかも(爆)。個人的には、4巻が一番「痛い」感じで、5巻は少しソフトになったなって思いました。



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