ファンタジー・海外

Robin Hobb
ロビン・ホブ

別名義もあるそうですが、どちらにしても読んだのはまだちょっとだけ。人間描写が、ちょっとトラウマ入ってるのかしら、という感じのものなのですが、何冊か読んでみないと判断は下せません。

「騎士(シヴァルリ)の息子」
鍛冶靖子訳 創元推理文庫 2004
 "Assassin's Apprentice" 1995

海に面した豊かな地、六公国を治めるのは心を使う「技」を持つ遠視者の一族。彼らはその名に、自らが持つべき「徳」を込められて名付けられる。現在の王はシュルード(賢明)。その息子達はシヴァルリ(騎士)、ヴェリティ(真実)、そしてリーガル(帝王)。
シヴァルリの私生児として生まれ、王宮に引き取られた少年は名も公式の庇護者も持たず、ただフィッツ(庶子)と呼ばれて育つことになった。しかし、彼が10歳になったとき、祖父である王は彼を自らの臣として育てることを決める。それは、王家の影の力、政策のための暗殺者としての一生を少年に与えるものだった……。

久々に、文庫でちゃんとファンタジー。日本語で読むとあっという間ですねー。後半は結構はまって楽しく読みました。でも、読み始めてすぐに「しまった、英語で読んだ方がよかったのかも」とも。別に訳が嫌だとかいうわけではないのですが、これは多分原書で読む方がもっと幻惑されて楽しかったでしょう。時間はかかったはずですが。

ええとー、全体的に暗いお話です。それに、厳しい。主人公のフィッツは理解者もなく孤独で、やっと仲間を作っても引き離されたり、仲良しの犬とのつながりを怒られて犬をとりあげられたり……。そして、暗殺者になるための修行です。よくぐれませんでしたよね(笑)。

でも、物語全体が主人公の追想の形をとって語られていて、そこには、諦観ともある種の満足とも言える雰囲気が流れています。だから、本当の意味で、どん底に落ちるイメージはない。主人公は本当にひどい目にあうけれど、それを大人になった主人公が思い返して、「今にして思えばこれこれこういうことだったのだ」と語ることで、全体をソフトなものしている感じですね。そういう意味では、読みやすいしつらさもそれほどでもない気がしました。

王家に生まれた暗殺者。流行の設定なのか、結構あちこちで目にします。それぞれに作者の個性が出て面白いですね。
2005.01.19

"Royal Assasin" (The Farseer) 1996
「帝王の陰謀」 鍛冶靖子訳 創元推理文庫 2005

『ファーシーアの一族』の第2巻。
私は1巻を日本語で読んで、その時に、「これは英語で読んだ方が面白い話のような気がする」とすごく思いました。それで、3巻までまとめてPBを買ったのですが、なかなか読んでいる暇がなくて(笑)。2巻の翻訳が出てしまうという話を聞いたので、慌てて読みましたー。やっぱり、私にはこのシリーズ、英語で読む方がずっと心にしっくりくる感じです。翻訳が気に入らなかったというわけではなかったのですが、こういう、感性に訴えてくる本は、私には、英語で読んだ方が共感しやすい気がするんですよね。あくまでも趣味の問題ですけれど。

さて今回の物語はこんな感じです。

山の王国で、辛くも死を逃れたフィッツ。だが、その毒は彼の身体に深い打撃を残した。すぐに疲れ、発作を起こして倒れる自分に絶望し、自己憐憫に浸る彼は、ある日町で、捕らえられて檻に閉じこめられ、売られている1匹の子狼に出会う。
一方、バックキープでは、王が日に日に衰えを見せ始め、継ぎの王ヴェリティにすべての重責がのしかかっていた。バックキープの周囲には何故か「熔化された者」達が集まり始め、野心に燃える王子リーガルの陰謀と、「赤い船団」からの激しい攻撃は、六公国を内部から引き裂こうとしているかのようだった……。

正直、暗いです。英語で読むと莫大な時間がかかることもあって、かなりどん底な気持ちになりました(笑)。でも、面白い。1巻目ではまだまだ子ども子どもしていたフィッツも、この巻ではもはや子どもでいることは許されません。次々と降りかかる苦難を乗り越えて、大分立派になってきましたねー。頑張れ少年。

ところで、暗殺者教育を受けて立派な(?)暗殺者に育ったフィッツですが、それはどちらかというと毒殺系で、子どもだったこともあって武術はいまいちでした。そして、剣はあまり得意ではなかった彼が、この巻で「向いている」として与えられた武器は「斧」。
ファンタジーの少年主人公(内省的で繊細)の武器が、「斧」。しかも、熱中するとバーサーカーに(爆)。
…………微妙?

英文は、この手のファンタジーとしては普通か、比較的読みやすいといった程度のレベルです。私は割と簡単だなーと思って読んでいました。割と普通の単語で書かれている感じ。というわけで、翻訳2巻を読んで待ちきれない方、一緒に3巻をPBで(笑)。
でも、狼との会話がどんな風に訳されるのかちょっと興味があるので、翻訳版が出たら立ち読みに行こうと思ってます。そういえば、狼と言えば「ベルガラス」も今月あたり翻訳が出るんですよね、確か。双方の狼感覚を読み較べるのも面白いかもしれません。
2005.07.03

追記
「帝王の陰謀」、立ち読みしてみました。
狼との会話が気になっていたわけですが、それよりも先に呆然としたのは一人称がひらがなの「わたし」だったこと(笑)。1巻目の時は日本語でだけ読んだので全然気にしてませんでしたが、そういえばそうだったのか……。うわー、印象違うー。
ということで、文庫は買わずに帰ってきました。文庫版だと上下それぞれ千円以上するという噂だし(注・PBは1冊。とりあえず千円にはいかない)、お財布にもその方がやさしいでしょう(爆)。いやはや。
2005.07.15

"Assassin's Quest" 1997

第3巻です。これまでのネタバレを避けたい方、翻訳版が出て自分で読むまで先のことは一つも知りたくない、という方は、この先は読まないでくださいませ。
苦節1ヶ月半……。長い道のりでした(苦)。もうちょっと日々の読書時間を増やして量をこなさないとダメですねー。この長さ(PBで757頁)でも、せめて1ヶ月は切りたいものです。文庫版、ぎりぎり2冊でしょうか? 高そうー。

相棒である狼ナイトアイズに心を預けることで、辛くも本当の死を免れたフィッツ。しかし、狼と心を重ねることは、人としての心を失うことでもあった。人としての自分を忘れ、記憶もほとんど失った彼を、ブリーは厳しく、けれども献身的に見守り続ける。人として再び修羅の道を生きるのか、人としての自分を捨てて狼として自由に駆けていくのか。己に返ったフィッツは、再び選択を強いられることになる。バックキープに来て以来、ブリーの、チャドの、ヴェリティの、そしてケトリッケンやペイシェンスの"boy"でありつづけた彼。しかし今、彼は一人の男として、自らの道を選ぶことを望んだ……。

そして、彼が選んだのは「リーガルを殺しに行く」ことなんですねー。
合掌。

2巻までのあの緊張感で、3巻がしょうもなかったらどうしよう? というのは杞憂でした。大丈夫です。最後までとんでもねー話でした(笑)。ここまで徹頭徹尾主人公が痛い思いをするお話も少ない気がします。主人公のみならず、周囲もそれはもう大変で(遠い目)。

この巻は、旅また旅のお話です。バックの街からリーガルが移り住んだ現在の王都Tradefordへ、そしてそこから山の王国の首都Jhaampeへ、更にはヴェリティが旅立った山の向こうへとフィッツの旅は続きます。その間も、赤い船団は六公国を襲い続け、リーガルは己の欲望のためだけに民からの搾取を続け、国中が疲弊していくのです。Skillによってその様をつぶさに見てしまうフィッツの唯一の希望は、ヴェリティの存在でした。けれど、やっとたどり着いたその場所でフィッツが目にしたのは……。

お楽しみに(笑)。
私としては、割とびっくりな展開でした。そう来るか? みたいな感じでしょうか。でも、個人的には、「予言」の話はなくてもよかったんじゃないかな、と思います。ない方がすっきりして焦点が絞られる感じ。Foolとの友情話はいい感じなんですが。

何はともあれ、全3巻、はらはらしながら楽しんで読みました。色んな意味で苦しすぎるので、この人の作品をもっと読むとしたらしばらくたってからかな、と思います。落ち込んでいるときに読んでいると、主人公の自己嫌悪や自己憐憫に引きずられて大変なことに(笑)。読むのは、日本語よりも英語の方がやっぱり良かったです。英語的には初心者向けとは言えないですが、難しいわけでもない。こういう、内面から攻めるような話は、感情をのせていけばいいので、ある意味読みやすいんです。ちょっと、かなり長かったですけどね(笑)。
2005.10.09



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