ファンタジー・海外

David & Leigh Eddings
デイヴィッド・エディングス

文庫派のファンタジーファンの間では、刊行当時から大人気の作家さんです。壮大な設定の物語を、ユーモアあふれる筆致で細密に描く、大変なストーリーテラー。「原書でも読んでしまった」ファンが大勢いる模様です(笑)。

翻訳では、4つのシリーズ(といっても、2つずつつながってます)が刊行されています。これは、全部並べるとちょっと大変なのでとりあえずシリーズとしてご紹介。

「ベルガリアード物語」
"The Belgariad"
早川文庫
「マロリオン物語」
"The Malloreon"
早川文庫

センダリアの農園で、伯母のポルガラとともに暮らしていた少年ガリオンは、ごく普通の農園の少年だったはずだった。だがある日、彼の世界は一変し、愛する伯母も、時折訪ねてきていた吟遊詩人の老人も、見た通りの人間ではなかったことを知る。そして、彼の旅は始まった。それは、予言された旅。かつて起こった神々の争いを終結させるための旅だった。

祖父である魔法使いベルガラス、伯母である女魔法使いポルガラ、そして、様々な国から集まった、予言された旅の仲間達。個性豊かなキャラクターと、国々やそこに住む人々の造形が楽しい、でも、骨太の本格派のファンタジー。とても面白いシリーズです。長い間絶版状態だったようですが、最近、「ベルガリアード」は新装版として復刊されました。「マロリオン」もこれから出る模様。嬉しいことですねー。

で、その後出版された番外編、全然翻訳される気配がなかったので、苦労してPBで読みました。でも現在、早川文庫から翻訳刊行中です。まだ読んでいません(苦)。

"Belgarath the Sorcerer" 1995
「銀狼の花嫁」「魔術師の娘」「王座の血脈」 宇佐川晶子訳 早川文庫 2005
"Polgara the Sorceress" 1997

前者はベルガラスが語る、彼の半生と、ベルガリアード物語直前までの、予言成就に向けた奮闘の物語。後者は、ポルガラの語る、彼女から見たやはり、ベルガリアードまでの世界の物語。全部1人の語り口調だし、訛りのあるキャラクターはいるし、読むのはかなり大変でしたが、やっぱりすごく楽しかったです。特にポルガラの方が傑作。でも、先にベルガラスを読んでからの方が絶対面白いです。もちろん、本編は先に全部読みましょう(笑)。


「エレニア記」
"The Ellenium"
角川文庫
「タムール記」
"The Tamuli"
早川文庫

この2つのシリーズがそれぞれの出版社から出されたとき、私たちファンは激怒したものでした(笑)。しかも、角川文庫の方は早々に絶版。なんとかしてー、って感じでしたね。

王家と教会が権力を分け合って統治されてきたエレニア国。だが、権力の座を狙う司教アニアスは、現王を毒殺し、新女王となるエレナをも不治の病に倒れさせた。女王を生きながらえさせるため、忠実なる騎士団は自らの命を賭して彼女をクリスタルに封印し、彼女を救うための手段を求めて旅に出る。中心となるのは長い旅から戻ったばかりの「女王の擁護者」スパーホーク。騎士団の教母である、スティリクム人のセフレーニアとともに、彼らの危険に満ちた旅が始まる。

こちらのシリーズも、ユーモアたっぷりの楽しい作品。キャラクターの個性にも磨きがかかって、秀逸です。会話がいいんですよね。爆笑。魔法、聖騎士、化け物、その他、お楽しみがたくさんでサービス満点のお話です。「ベルガリアード」よりはこちらの方が気軽かなって思っていました。


それから、最新シリーズ。もちろん未翻訳。
"The Elder Gods: Book 1 of the Dreamers" 2003

Dhrallの地は、4人の実在する神々に統べられていた。
古き神々がその任に疲れたとき、世界には新たな4人の神々が生まれ、役割を引き継ぐ。古き神々はしばし休息の時を過ごし、当代の神々が疲れを覚える頃に目覚めて、再びその任に復帰する。それは、悠久の時に繰り返されてきた、自然の理のひとつだった。
そして、今、神々の入れ替わりが近づき、世界は新たな時代を迎えようとしていた。しかし、その神々の隙をつくように、Dhrallに寄生した人外の存在Vlaghがその力を増し、人間達の世界を脅かし始めたのだ。神々に守られたDhrallの人々では、Vlaghの侵攻に太刀打ちできない。Dhrallの西の地を任された女神Zelanaは、Vlaghを食い止めるため、他の大陸の「野蛮人」たちを「金」で雇うことにした……。

ええ、これだけですでに大爆笑ですね(笑)。
金で軍隊を雇って戦争をさせる神様。しかも、よその国の軍隊。
強烈です。実際には、Zelanaが雇ったのは海賊だったりするんですが、弟のVeltanはちゃんとした軍隊を雇いますし、中身は一緒。相変わらずのかっとばしぶりです。話の感じからいくと4部作になるのかな。それぞれの神の領地での戦いが順番に描かれるのではないかと思います。今回は、「西」で、次は「南」? お楽しみはこれからです。

Zelanaたち、当代の神々は、Elder Gods と呼ばれる昔からの神様たちです。ギリシャ神話の神々のように、人間的で、それなりに自分勝手。でも、必要なときには必要なことをするし、その力の使い方には制限がある模様。彼らの後を継ぐことになる次代の神々"Dreamers"は、自らの見る夢によって世界を変える、別の種類の力の持ち主。彼らの力の本質は、まだ明らかにされていません。

この個性的な神様たちに、より強烈な個性を誇る人間達が加わって、相変わらずのエディングス世界が展開されます(笑)。会話のひとつひとつが大爆笑。口の減らない連中がいっぱいで、しかも実力派。素晴らしいです。
2004.11.14


"The Treasured One : Book Two of the Dreamers" 2004

Zelanaの兄Dahlaineは、北の地の山上に家を構えている。彼の養い子はAshad。Eleriaがイルカたちに育てられたように、Ashadは熊たちに育てられ、Dreamerとして目覚めつつあった。彼が見た夢、それは、Veltanの領地に南と西から侵攻する2つの軍隊の夢だった。
Dreamerの夢はいつか必ず現実となる。Dahlaine兄妹と協力者達は、Veltanの領地に移動し、戦いの準備を始めるが……。

舞台は豊かな農耕地帯であるVeltanの領地。戦場となるのは農地ではなく、「Vashの滝」と呼ばれる大瀑布周辺です。本来は、羊飼い達しか行かないような厳しい山岳地帯。でも、前作"The Elder Gods"で「金」で雇われたMaagの海賊集団とTorogiteの傭兵軍団が今回も大活躍。決して的を外すことのない男Longbowも、何とかして酋長の責務から逃れようと奔走するRed-Beardも健在。新たに、Veltanの親友である地に足のついた農夫Omagoも登場してますます盛り上がってきました。国民性や民族性の書き分け、人物造形が相変わらず大爆笑。エディングスの文章、本当に独特ですよねー。

今回は、章ごとに、視点がそういう「助っ人」1人1人にスポットを当てていく感じに展開されていました。Narasanの片腕たちとか、Hook-Beakのいとこたちとか。少年時代の彼らの話も沢山出てきて、物語に奥行きと笑いの種を与えています。今回、新たな謎の助力者も現れたし、神様世界も色々(笑)。本質的に「神様」がそうやってそこにいることに慣れない助っ人達が「どうやってやったんだ?」と聞く度に、Dahlaine達が「本当に知りたいのか?」と聞き返すのが楽しかったですねー。私も、よく、悪魔に聞き返されてます(笑)。

これ、やはり4部作なのでしょうか。まだ先は長いなあ。次巻は" Crystal Gorge"。PB待ちしますー。
2005.08.05



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