ファンタジー・海外

"To Weave a Web of Magic"

"To Weave a Web of Magic"
Claire Delacroix, Lynn Kurland, Patricia A. McKillip, Sharon Shinn
2004

ファンタジー・ロマンスのアンソロジーです。「ロマンスな気持ち」だったときにたまたまアマゾンのおすすめ本に出てきて、勢いで買ってしまいました。PBだからいいやと思っていましたが、届いてみたら大きめの版でちょっと悲しい気持ちに。値段で予想すべきでした(笑)。タイトルの著者順は上記のようになっていますが、以下は掲載順。ハーレクイン・ルナのアンソロジーはいかにもハーレクインな展開のお話ばかりでしたが、こちらはひと味違いましたねー。割と暗めの、緊張感漂うお話が多かったです。

Patricia A. McKillip
"The Gorgon in the Cupboard"
売れない画家のHarryは、友人の妻への報われぬ恋心に悩み、また、彼女のような優れたモデルを見つけられないことにいらだちを覚えていた。ところがある日、彼が心のままに理想の女性像をスケッチすると、その絵には魂が宿った。彼女はGorgon。かつてその姿だけで人々を石と化したメデューサその人だった……。

ファンタジーファンの皆様にはおなじみ、マキリップの、珍しく現実に近いファンタジーです。異世界物というより、ファンタジーの入った時代物という感じですね。時代も現代に近くて、ガス灯があるくらいの時代。ちょっとびっくりしました。その分、文章もいつもほどきらきらしくはないのですが、主人公達の心の揺れが丹念に描かれていて、さすがだな、と思わされました。

Lynn Kurland
"The Tale of the Two Sword"
地方領主の姫Meharは、父の決めたぼんくら王子との結婚を嫌って城を飛び出し、名馬Fleetとともに森に分け入る。家来達の捜索の手を逃れ、どこか安全なところへ行って、母の遺した魔法の本から魔法を学ぶことが彼女の望みだったのだ。しかし、迷い、空腹に苦しむ彼女がたどり着いたのは、廃墟同然の城だった……。

これはロマンス作家さんの作品。ヒストリカル系を書いてる方だと思うのですが、あまりよく知りません(汗)。この1作だけは、おとぎ話のような雰囲気の可愛いお話。長い1冊の本のロマンス部分だけを取り出した、というつくりになっていて、だからロマンスとしてはちゃんとお話が終わっているけれど、物語全体のオチはついていない、そういう意味では消化不良な作品です。これだけでも十分楽しかったですけどね。

Sharon Shinn
"Fallen Angel"
最初に私にキスした天使は、大天使ラファエル。私はまだ何も知らずにゆりかごの中で眠っていた。二番目に私にキスした天使は、大天使ガブリエル。私は14歳で、「グローリア」のソロを歌い終えたばかりだった。三番目に私にキスした天使は、大天使ではなかった。それどころか彼は人間を殺した罪で追放された天使であり、なお悪いことに、彼が殺したのは私の父だった……。

「魔法使いとリリス」が結構評判になっていたシャロン・シン。これは彼女の代表作「天使」シリーズ(未翻訳。私も未読)の1編であるようです。舞台は古代のサマリア。天使は、人と神の間に立つ者として、人間の上位者として描かれます。割とタイトで、ファンタジーというより文化人類学系SFな感じ。でも、別にSF的な道具立てがあるわけではないです。実は私は「魔法使いとリリス」はあまり合わなかったのですが、今回こちらを読んで、やはり英語で読んでも合わないらしいという悲しい結論に(笑)。このお話自体は面白かったし、惹きつけられる部分もあったのですが、ちょっと感性が違うみたい。残念です。

Claire Delacroix
"An Elegy for Melusine"
半人半妖の美姫Melusineは、自らの予見に従って若き騎士Raymondと誓約を交わし、彼の妻となる。それは、自らのにかけられた呪いを解くため、人の子としての自分を解き放つための手段のはずだった。だが、やがて……。

ヒストリカル・ロマンス作家、クレア・デラクロワの描く「メリジューヌ伝説」のノベライズです。割と有名な伝説らしく、なんとなく記憶が(笑)。呪いにより、毎週土曜日には下半身が蛇に変わってしまうメリジューヌ。生まれてくる子供達も皆、何らかの異相を持って生まれてきます。全体的に暗めのトーンの、悲劇的なお話。不思議なほど生真面目で一途なメリジューヌは哀しくて魅力的です。

と、まあ、こんな感じの、なかなか充実した1冊でした。英語的には、普通かなー。ハードなファンタジーほどには難しくありませんし、文章は読みやすい流麗なものが多いですが、とっても簡単、と言ったら多分嘘に(笑)。まだ大きい版のPBしかないみたいですが、表紙も綺麗だしフォントも読みやすいのでその意味ではポイント高いです。
2005.05.19



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